さまざまな本が毎日出ていますが、その中に「トンデモ本」というジャンルがあります。
最近はあまり聞かないので、ひょっとしたら死語になっているかもしれませんが、トンデモ本とは、「宇宙人との交信に成功した」とか、「超能力で病気を治した」とか、内容がぶっ飛んでいるものを指します。
でも、いま話題になっているのは、誤植だらけという「トンデモナイ」本です。
それは『岐阜信長 歴史読本』という本で、大手のKADOKAWAが制作したものです。
岐阜市が制作を依頼したもので、公金を使ったものですから面目丸つぶれです。
誤植が30か所あるということで、ワイドショーでも取り上げられていました。
ミスの中でいちばん大きいものが地図。
岐阜駅などが記載されているバックに大きく「三重」とあります。
あまり大きいとかえって見落としてしまうことがあるんですね。
細かいところに目が行って、大きいところはスルーしてしまうことが。
といっても、それはチェックの段階の話でそのまま本になるのはレアケースです。
ほかのミスも「やっちゃった感」が大きいですね。
ホテルの紹介で「ハイグレードなホテル」が「廃グレードなホテル」になってたり。
「最高」が「再校」になっている箇所もありました。
これこそ「再校」がチェックされてない証拠かもしれません。
記事から経緯を判断すると、校正を担当した会社は「ちゃんと赤字を入れたが、直ってなかった」と言っています。
また「地図は入っていなかった」とも言っています。
ここから推測できるのは、スケジュールの大幅な遅れです。
原稿を入れて最初に出るのが「初校」ですが、そこに地図が間に合わなかったのです。
間に合わない地図や写真のスペースを空けておいて、あとから入れることを「後送」といいます。
すべてが時間との戦いです。
完成の日が決まっていて動かせない、いわゆるケツカッチンの状況です。
校正の会社が「赤字を入れたが直ってない」と言っているのは、通常は初校に赤字を入れたものを直した「再校」が出て、それを赤字とつき合わせてチェックするのですが、恐らく時間切れでそこまで行けなかったということでしょう。
校正の会社には責任はないと考えてよいと思います。
あくまで私の推測ですが、もうぎりぎりで間に合わないので赤字を入れたものを編集者がチェックして印刷所に渡したのではないでしょうか。
これが「初校校了」という、きわめて危険なギャンブルです。
そこで、なんでそんなに見落とすのか、と疑問に思われるかもしれませんが、たとえば間違いが500か所あったとすると、そのうち470か所は見たが、30か所は落としたということなのではないでしょうか。
チェックしなければならない部分が多すぎれば、漏れが出ます。
これが今回の散々な結果の原因だと思われます。
出版界も過酷な状況におかれている、その一端が露呈された事件といえます。