印鑑のまちがい

前回、紹介した梶原しげるさんの『不適切な日本語』(新潮新書)を読了。
いや、面白かったです。

しゃべりのプロなので、内容はアクセントなど、しゃべり言葉に関するものが中心になっています。スタンダードとして、NHKがよく出てきたような気がします。

それにしても、辞書の読み比べの楽しさを語るなど、この著者の探究心は半端じゃありません。
梶原さんに言わせると、国語辞典は一家に一冊、ではなくて、何冊かを読み比べなきゃダメだそうです。

たしかに、いままで、辞書的にはまちがいと思われていた「全然OKです」という言い方を認めている、三国のような辞書があるなど、それぞれ個性があるようです。
ちなみに三国とは三省堂国語辞典の略で、この本では、当たり前のように「三国」として登場します。

ということで、この本から、もうひとつ、私も「へえー、そうだったのか」と思った部分を引用させていただきます。

「印鑑をご持参ください」のどこが問題か
という項です。

私には何の問題もないように思えます。
ところが。「印鑑」が実は正しくはない意味として使われていたのです。

そのことを、梶原さんは、ある、はんこ屋さんのブログで知ったそうです。
そのときのタイトルが「印鑑は彫れません!?」。
いや、これはなんだ? と思いますよね。プロなのにどうして彫れないのとね。

それで判明したこととは。
印鑑とは、鑑(かがみ)ですから、本来は印影と同じで、紙に押されたもののことなのです。
今、一般に印鑑と呼ばれている、道具のほうは、印章と呼ぶのが正しいそうです。

いわれてみれば、ごもっともですよね。鑑(かがみ)ですものね。

これもよくある、いつのまにか広く使われてしまうようになり、なし崩し的にOKになってしまった誤用の例の一つでしょう。

いまさら「印章が必要です」と言われても「印鑑ではダメですか?」と混乱するだけですからね。

 

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