入籍という言葉

フリーアナウンサー梶原しげるさんが書かれた『不適切な日本語』(新潮新書)を、読み始めたところですが、なかなか面白そうです。

以前、この方の『すべらない敬語』(新潮新書)を週刊誌の書評で取り上げたことがありましたが、言葉へのこだわりに、尋常ならざるものを感じて、敬服したものでした。

冒頭に、「私たち入籍しました」がおかしい、という内容のコラムがあったので、読んでみると、なるほど、私も気づきませんでした。

入籍という言葉には、旧民法における封建的戸籍制度の名残があり、女性の権利向上を阻害するもの、ということなのです。

といっても、若い人にはいまひとつピンと来ないかもしれません。
いま、入籍という言葉は、挙式はまだですが、という「とりあえず感」で使われる傾向にあるようなので。

つまり、とても便利な言葉なので、不適切なのを、スルーした感じになっているのでしょう。
ブライダル業界でも、平然と使われているようですから、いまさら何を? と言われそうです。

でも、梶原さんの本を読むと、入籍という言葉が不適切なのは当然として、不正確でもあることが分かりますね。
まず、役所では、入籍届と婚姻届は用紙が違います。もちろん、結婚のときに出すのは婚姻届です。入籍という言葉を使っているために、両者を混同するという弊害もあるのです。

民法には、結婚は、2人が新しく戸籍を作るのが基本と書かれています。
これからすると、入籍よりも、新籍、創籍という言葉のほうがふさわしいのではと思います。

姓も、夫、妻、どちらの姓でもかまいません。
夫が妻の姓になるのは、養子縁組と捉えられていますが、養子に関係なく、夫婦いずれかの姓を名乗れます。実例が少ないだけです。

これからは、籍を入れる→新籍に入る、としたほうが、二人の前途への祝福が増すかもしれませんね。

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