今回も言葉に関する調査の話です。
文化庁がこの21日、2015年度「国語に関する世論調査」を発表しました。
15年度といっても去年のものではなく、今年の2~3月に実施したのですが4月が年度代わりなので、古い数字になるのでしょう。
22日付の朝日新聞に出ている結果を見てみると、まず、「こんなに食べれない」「富士山が見れた」などの「ら抜き言葉」が、今回初めて「食べられない」「見られた」という従来の言い方を上回ったことが判明しました。
これはちょっと意外でしたね。
まあ、恐らく、実勢では、とうに「ら抜き」派のほうが多いとは思うのですが。
たぶん10年前ぐらいには逆転しているのではないでしょうか。
やはり、この手の調査に回答する人(有効回答率54.6%)は、マジメな傾向がありますから、実勢とはズレる可能性が考えられます。
文化庁国語課の担当者によれば「られる」には尊敬や受身の意味もあるので「ら抜き」言葉は可能の意味だとすぐわかるという合理性も変化の要因では、とのことです。
たしかに「明日の会合は出られますか」などと言われると、可能か尊敬かわかりにくいですものね。
「出れますか」だと可能しかないので、混同しないよさはありますね。
また、言葉の使い方に影響を与えるものとしては、1位がテレビで86・6%、2位が新聞で43・7%、3位が携帯(スマホ)で34.3%となっています。
前回(2008年度)に比べて、スマホが驚異的に伸びたのはわかりますが、テレビがすごい高い数字と思いきや、これでも減っているそうです。
テレビの影響は恐ろしいほど大きいんですね。
はたして、作り手側にそこまでの自覚があるかどうかは疑問ですが。
あと、慣用句の調査もやっていて、この調査はかなり多岐にわたるものだということがわかります。
回答率が半分というのも理解できますね。
その中で、まちがいのほうが圧倒的に多いものが出ていたので、取り上げてみます。
「どちらの言い方を使う?」という設問で、「混乱したさま」を表す言い方として「上を下への大騒ぎ」が22・5%、「上や下への大騒ぎ」60・8%となっていました。
回答数の少ない「上を下への大騒ぎ」が正しいのですが、これはまちがいやすいですね。
もうひとつ「眠りから覚めたときの気分が悪いこと」も「寝覚めが悪い」が37・1%、「目覚めが悪い」が57・9%となっています。
6割の方がまちがえていますね。
ま、ふだんあまり使わない言葉ですから、直す機会がないままに過ごしていることが多いです。
この種の誤用は、日常会話の上ではさほど問題ありませんが、原稿として書いて残すときには、後悔することになりますので、やはり直しておいたほうがよいと思います。