メッカ
ことわざや慣用句の中には、本来は誤用なのですが、永年使われてきて、「ま、いいか」と許容に転じているものがあります。
たとえば、「直線、一気に9頭をごぼう抜き」などと、競馬実況などでよく使われる「ごぼう抜き」。
また、リレーなどの、第4走者が最後に他の選手を何人も抜くときにも使われます。
私は競馬が好きなので、この言葉に何の違和感もありません。
ところが。
もともとは「一人ずつ、片端から引き抜く」という意味なのですね。
なにせ、ごぼうを地面から抜くわけですから。
昔は、よくデモ隊の座り込みを警官が阻止する際に使われました。
今、そういう場面に遭遇することが減ったので、本来の意味が薄れたといえるかもしれません。
やはり「ごぼう抜き」という強い語感が、一気に抜くというイメージにつながったのでしょう。あまり違和感がないので、もともとの意味は違いますが、いつのまにか定着してしまったというわけです。
ま、この誤用に関しては、さほど問題になることはないので、目くじらを立てることはないかと思います。
ただ、なかには、これはちょっとまずいのでは、と思われる例もあります。
それは、メッカです。
メッカとはサウジアラビアにある、イスラム教の聖地です。地名です。
それが、転じて、「中心地、人が集まる所」という意味で使われるようになりました。
ですので「アニメファンのメッカ」など、よい意味で使われるのはまだしも、そうでない場合は、イスラムに対しての礼が少々欠ける、ということになります。
たとえば、よく見かけるのが「ナンパのメッカ」「暴走族のメッカ」などの使い方です。
最近では、イスラム圏からの来日する人も増えていて、飲食店などでは、ハラルなど、食べ物にも気を遣っています。
メッカも本来のイスラムの聖地としての意味以外で使う際は、もっと気を配る必要がありそうです。