『字幕屋の気になる日本語』

数日前にオリンピック期間中はほかのことは目立たなくなるようなことを書きましたが、さすがにSMAPの解散宣言には驚きましたね。

ワイドショーは待ってましたとばかり、オリンピックとSMAPの2本立てですかね。

SMAPに関しては、各局、いろいろ掘り下げようとしていますが、コメントとしては薬丸裕英さんの「25年間の彼らの素晴らしい功績を称えたい」に尽きますね。
さすがヤックンだと感心してしまいました。

さて、今『字幕屋の気になる日本語』(太田直子 新日本出版社)という本を読んでいるところです。

タイトルからもわかるとおり、著者は第一線の映画字幕翻訳者。
このエッセイは5冊目にあたり、これまで同様に、字幕作りのむずかしさ、裏話などが満載で、日本語を扱うものとしての、心構えのようなものが伝わってきます。
そして何より、映画愛にあふれています。

それにしても字幕は1秒=4文字という字数制限があるので、たいへんな仕事だということがわかります。

本書の「その一、字幕屋の気になる日本語」を読んで、共感するところがおおいにありました。

私も「美しすぎる市議」などの「~すぎる」についての違和感を書いたことがありますが、太田さんもそのことについて書かれています。

ただ、こうしたヘンな日本語にも効用があって、昨年、甲子園に出た高校球児が、お世話になったホテルのホワイトボードに「おいしすぎるご飯ありがとうございました!」と残したエピソードはさわやかだと結ばれていました。
たしかに「おいしいご飯ありがとうございました」より、相手に気持ちが伝わりますよね。

あと「世界観」という言葉が安易に使われていることを指摘しているエッセイもいいです。

「~のイメージ」「~の世界」をすべて「~の世界観」にしてしまっているんですね。
日常的にいつのまにか「私の世界観では」などと使ってしまうおかしさ。
それに気づかない怖さですね。

ほかにも「被災した人たちに元気を与えたい」など、上から目線の「与える」という言葉を、言っている本人は善意で使っているケースについても書かれています。

常に言葉と格闘している著者ならではの内容のあるエッセイが多いです。

残念なことに、太田さんは今年1月に56歳の若さで亡くなられています。
謹んでご冥福をお祈りいたします。

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