いまや無敵とも思える文春砲ですが、思わぬところでボロを出しました。
なんと、ライバル誌である「週刊新潮」の中吊り広告を、出版取次会社を通じで入手していたらしいのです。
中吊り広告とは、電車の車両内に吊るされている、あの見出しがバーッと載ったやつです。
全国の書店にも配布されるので、本と同じように取次を通すわけです。
両誌とも木曜日発売ですので、中吊り広告はそれに合わせて火曜日午後には刷られます。
記事の最終締め切りは火曜夜なので、新潮の中吊りを見て、文春が記事に多少のアレンジを加えることは可能です。
これはちょっとアンフェアですね。
ただし、いちばん悪いのは取次会社です。
取次会社をはじめ、印刷所、組版所などは、作業上、本ができる前に内容に触れることができます。
それを外部に漏らしては、信用に関わります。
たとえば、村上春樹の新刊だって、発売前に読もうと思えば読めるわけです。
作家からも不安の声が上がりそうです。
そういえば、私が自費出版の仕事をしていたとき、ある小説の著者から、「ところで、私の本はどこで作られるのですか?」と聞かれたことがあります。
仕事の質についての質問だと思って、印刷所と組版所の名前を出して「仕事のできるところなので安心してください」と答えたところ「内容が外部に漏れてアイデアを盗まれる恐れはないのでしょうか」と心配されていたことがわかりました。
それを聞いてちょっとあわてましたが、「そんな心配はありません。信用できる会社です」というしかないですよね。
そこを疑ったら、きりがないですから。
ですので、今回の件にはちょっとがっかりです。
出版界にしてはあまりにモラルが低い話です。