長い間、編集の仕事をしていると、帯のキャッチコピーなどに使う言葉で、なるべく使いたくないが、つい使ってしまうような言葉があります。
これが常套句です。
タイトルにある「全米が泣いた!」はアメリカ映画の予告編によく出てくるコピーで、今ではギャグ的な褒めコピーとして、日本の同人誌などで使われています。日本なのに「全米が泣いた」というのがおかしいです。常套句を逆手に取ったうまいやり方だと思いました。
これがホラー映画だと「全米が震えた」とか、コメディーなら「全米が笑い転げた」とかバリエーションもあります。
さて、帯のコピーですが、まず、著者の名前の前につける言葉ですが、何か具体的な肩書きのようなものがあれば、それを使います。「元総理」とか「医学博士」とか。
特に強調すべき肩書きがない場合は、誰にでも通用するような言葉で著者にふさわしいものを使います。たとえば「鬼才」「異才」とか「学究の徒」「反骨の士」などです。ほかに「気鋭の~」「俊英」なども使います。この辺が常套句で、余りバリエーションがないので苦労するところです。
本の内容に関しては、推理小説であれば「戦慄のサスペンス」「謎の連続殺人」など。ノンフィクション系であれば「定説を覆す新事実」「従来にない発想で探る~」など。若い人の詩集などでは「瑞々しい感性で」「驚異の新人登場」などが、常套句といえるでしょう。
なるべくなら使いたくはないが、何も浮かばないときはつい頼りがち。みんなそう思いながら、編集者は今日も頭を捻っているのです。