文章は慎ましく

野球では、現在WBCが行われていますが、日本はまずまずですかねえ。

これからどんどん相手が強くなってきますから、たいへんだと思います。

 

そういえば第1戦のキューバとの試合でヤクルト・山田選手の「幻のホームラン」がありました。

 

スコアが1対1の状況で、山田選手がスタンドぎりぎりに飛び込む2ランを打って3対1になったかと思いきや、外野席最前列にいた少年が自分のグラブで打球を取っちゃったんです。

 

そのせいで、ホームランと認められずに日本が1点損した形になりました。

少年は歓喜の笑顔のあと、事態の急展開にシュンとなって、そのあとフードをかぶってうなだれていました。

 

「これで日本が負けたらお前のせいだ!」という茶の間の声が聞こえたのでしょうか。

私を含めてそう思った人、多かったんじゃないでしょうか。

 

その後もネットで少年の名前(間違った名前のようです)などが出たり、かなりの騒ぎになったようです。

 

冷静に考えれば、褒められる行為ではないですが、犯罪ではないですからね。

 

逆に少年を擁護する声も多いので、少しはほっとしますが、この少年に対する一連の動きは常軌を逸してますね。

 

 

さて清水幾太郎『論文の書き方』から「文章は慎ましく」です。

 

会話は相手という協力者がいますが、文章は孤独です。

だれも書き言葉に相槌など打ってくれません。

 

そこで人は落とし穴にはまりがちです。

どこにも味方はいない、言葉だけが頼りと思うと、どうしても強い言葉を使おうとするのです。

 

重大な秘密を打ち明ける人は静かに語るはずです。

これは万国共通のルールです。

 

清水はドイツのクリスティアンセンの『散文入門』を例にとっています。

そこには散文を書くものが守るべきルールとして「すべて強調・誇張を避けよ」とあります。

 

「最大の……」と書きたいときは「大きい」と書きなさい、「極めて豊かな……」と書きたくても「豊かな……」で我慢しなさい、ということです。

 

そうなると、もう一つのルール「シンプルに書く」ことにも自然にたどり着きます。

これでもか、これでもか、と書くと読む人間の頭脳の満腹中枢を刺激してしまうのです。

 

おなか一杯で読書欲がなくなってしまいます。

このルールさえ守れば、あなたの書く文章はかなりよくなるはずです。

 

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