人を傷つける「は」

関東地方もようやく梅雨が明けたようですが、先日の雷雨と雹は梅雨だったんでしょうか。

 

もはや梅雨は存在しないと考えたほうがよいと思います。

入梅も梅雨明けもないとしたほうが、わかりやすいです。

ましては、戻り梅雨などありえません。

 

それにしても暑いです。

30度で「よかった」と喜んでしまうのが情けないです。

 

 

さて、皆さんはついよけいなことを言ってものごとをこじらせたことはありませんか。

今回からはそんな例を考えてみます。

 

テキストは『その言い方が人を怒らせる ことばの危機管理術』(加藤重広 ちくま新書)。

筆者は言語学者で、文脈を科学する「語用論」が専門の方です。

 

語用論といってもわかりにくいですが、コミュニケーションのズレをニュアンスでなく論理的に探る学問と考えればよいでしょう。

 

今回はたった一文字なのに火に油を注いでしまう「は」についてです。

 

まあ、不祥事は毎日のように起きて、あちこちで炎上したり、苦しい言い訳や謝罪を目にしたりするわけですが、そういう場所で出てしまうのが「は」です。

 

ある企業トップの謝罪会見で。

 

「本日発生しました事故の件ですが、この件につきましては、まことに申しわけありませんでした」

 

まあ、特に意識せずに「は」と入れたのでしょうが、「は」には限定の意味もあります。

「私、辛いものはダメなんです」の「は」です。

 

つまりこの「は」は、「この件については誤るが、ほかは誤らないぞ、この件だけだぞ」と解釈され、その先には「まあ、いちおう誤るしかないからな、このところついてないな」と言わんばかり、と思われてしまうわけです。

 

日常会話でも同じことです。

「この人、料理は上手なんです」

とうっかり言ってしまうと「あたしゃ料理だけかい!」と突っ込まれます。

「ルックス、性格はダメってこと!?」とエスカレートしてその先には修羅場が……。

 

この企業トップ謝罪会見の「は」は、重要な場なのでなるべく丁寧に慎重に、と「置きに行って」出てしまった「は」なのです。

 

丁寧なあまりに、よけいな「は」が入ってしまうと、違う解釈をされかねないということ。

「は」に気をつけたいものです。

 

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