校正者は、まず、校正紙を初めから一通り読んで行きます。これを「素読み」といいます。
素読みで、明らかな間違い、抜けたところ、文章の意味が通らないところを見つけて、それを直していきます。
さらに、読んでいて、「本当にこれで正しいのか?」と思った部分を、辞書、資料などで確認します。現在はインターネットという便利なものがあるので、専門知識がなくてもたいていのことは調べられます。ただし、ネットには間違った情報も載っているので、100パーセント信頼はできません。
素読みで注意しなければいけないのは、これはどう見ても違うだろうと思っても、直してはいけないケースがあることです。その大体が固有名詞です。
たとえば、私は競馬が趣味なのですが、競走馬の名前にはちょっと変と思われるものが、ままあります。
例を挙げましょう。昔、ハイセイコーというアイドルホースがいました。その子供に「カツラノハイセイコ」という馬がいてダービーを勝ちました。お父さんがハイセイコーですから、カツラノハイセイコーと伸ばすのが正しいと思いがちですが、ハイセイコで切れるのです。これは規則があって、馬名は9文字までと決まっているためです。
ほかにも「ラフォンテース」という馬もいました。これはもちろん「ラフォンテーヌ」が正しいのですが、どこかで誰かが「ヌ」を「ス」と見間違えたのでしょうね。せっかくのきれいな名前が台無しですが、一度登録してしまったのでそのままということになり、ラフォンテースはデビューから5連勝しました。
こういうこともあるので、やはり念のため調べる習慣をつけることが大切です。
ちなみに、「Wrong is right」とは名ジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクが、演奏が譜面と違うと指摘されたときに、言ったとされる言葉です。かっこいいですよね。
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